本レポートは、急激な人口減少、高齢化と労働人口の減少、社会保障費の増大など現代社会が直面する様々な問題に対し、デジタル社会に課せられた課題について論考したものす。折しも我々は、コロナ禍により従来とは異なる生活様式を体感し、そこでデジタルの恩恵について考えざるを得ない事態に遭遇しました。
他方、我が国ではデジタル施策が社会に浸透し利便性が享受できる社会に至っていない。その背景に『ニッポン病』という阻害要因があるのではないかという仮説を設け、普及に向けた課題について考察を加えました。
本来は社会環境に対応して社会制度が構築され、制度を支える手段としてデジタル技術が位置付けられるべきですが、我が国のこれまでのデジタル化は、従来の社会制度上にデジタル技術を覆い被せる努力のみが続けられ、社会制度も社会環境の変化に必ずしも対応できているとは言い難いと考えられます。旧来の社会制度を踏襲しつつ無理やり先端的なデジタル技術を導入しようとしても、それは借り物の技術でしかなく本来の効果など期待することはできません。
脱コロナ後の社会に向け、様々な制度・政策を柔軟に企画・立案を可能にする将来社会のグランドデザインを真剣に模索すべき時と考え、3章からなるレポートを公開しました。
第1章は、デジタル社会のデモクラシーについて考察した。権利と義務について税・社会保障の観点から検証し、公正公平な社会を実現する上でデジタル技術をどのように活用できるかを考え、公正で透明な社会構築に向けたデジタル活用のあり方について提言します。
第2章は、長寿社会に向け、組織と人材の活用をいかに図るべきかについて考察し、生産年齢人口の減少や働き方改革など様々な社会的課題に対し、イノベーティブな社会を実現する組織や人材活用や教育のあり方について提言します。
第3章は、デジタル化がもたらす健全な資本主義社会に向け考察し、所得格差や負担と給付の適正化、マネーの可視化による我が国の資本主義の健全な成長について提言します。
今後想定される社会変動は、これまで人類が経験したことのないほどの未曽有の変化になると考えられます。しかも、この変化は地震や津波のような実感が伴うものではなく、気づかぬうちに少しずつ変わっていき、気づいた時には取り返しのつかない事態になる可能性が高いと思われます。
それだけに、今後の社会変動に向けた気づきと備えが重要であり、本レポートがこうした気づきの一端にでも触れられていることを切に願っております。